福井の殿様

 福井の殿様が供をたくさん連れて城下を歩いていました。
 すると、さっと風が吹いてきて、かごの中へ一枚の紙が吹きこんできました。手にとってみますと、たいへん美しい女の絵が描いてありました。殿様はこのような美しい女がどこかにきっといるにちがいないと思って、家来に命じて方々をさがさせました。

 ついにそのような女が見つかりました。そばに呼びよせて見ると、絵よりももっと美しい人でした。殿様はたいへん喜んで、その女を妻にしてかわいがりました。

 ところがこの女の人は、美しいけれど一度も笑ったことがありません。殿様は女のひとの笑わないことをひどく苦にしました。どうかして笑わせようとして、いろいろなことを家来にやらせてみましたが、それでもどうしても笑いません。


 あるとき、一匹の子持ちの犬の腹を割ったら、美しい声で笑いました。

 殿さまはたいへん喜んで、その次に人間の子持ち女のひとをたくさん連れてきて腹を割りました。するとそのたびに、この女はますます美しい声で笑います。殿様はよいきげんでしたが、領民は困るばかりでした。このため金持ちの家の子持女のひとは、みんないやしい人のところへ隠れました。

 やがてこのことが諸国を漫遊していた水戸黄門様の耳にはいり、その女は殺されて、殿様は改心させられました。
 この女は掟君(豊臣秀吉の奥方)の化けたものでありますと。

 大阪の陣のとき福井の殿様が、豊臣家を裏切って大阪城の門を開いたため、大阪城は落ちました。それで淀君は福井の殿様を深く恨んで、福井へ化けてきて国をほろぼそうとしたのでありますと。
 そういうわけなので、淀君の霊を慰めるため、福井に墓をたて、その墓に金網がかぶせてあります。