天のくさり
昔、太郎と次郎という兄弟がありましたと。 昼間、母は「田んぼに行ってくるから。」といって出ていきました。そしてもうひと言、「だれが来ても戸をあけてはならないぞ。」と言い残していきました。 しばらくたつと、トントンと戸をたたく者があります。 「母さんだから戸をあけておくれ。」といっています。 はじめは用心してあけませんでしたが、なんべんもやかましく呼び立てるので、ふたりは戸をあけました。はいってきたのを見ると、太郎はどこかしら母でないような気がして、ビクビクしました。次郎の方はまだ小さいのでよくわからないのか、母だと思っているようでした。 夜になりました。母は次郎をだいて寝ました。夜中に「キャッ」という声がしました。わきに寝ていた太郎が、「何かしら。」と母にいいました。すると次郎を食べた残り骨をポイと投げつけました。 太郎は「やっぱり山姥だったのだ。」とびっくりして、外へ逃げ出し、背戸(うしろ庭)の梅の木によじのぼりました。 山姥は後を追いかけてきて、「どうしてのぼったの。」と聞いたので、「油をぬってあがった。」と太郎が答えてやりました。山姥はすぐ抽をぬってあがろうとしたが、つるつるすべってあがれません。 やがて山姥はだまされたことに気がつき、鍬で梅の木にキズをつけてあがってきました。だんだん太郎の方へ近づいて来ます。 太郎は恐ろしくなって、天に向かって、 「神様あ、お助け下さい。」 とお願いしました。 すると、天から一筋のくさりが下がって来ました。太郎はそのくさりにつがって、ずんずん天へ上がっていきせした。 それを見た山姥も天に向かって、同じく、 「神様あ、お顧いします。」 というと、古い腐れなわがぶら下がってきました。 山姥がそれにつがって上がろうとすると、途由で腐れなわがプツンと切れて、山姥は地面に落ち、ぐしゃぐしゃになって死にました。その落ちたのがそばの畑でありました。 そのためそばの根元が山姥の血に染まって、今でも赤いのだそうです。 ![]() |